嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「今の人、知り合い?」
少し探るように、新庄くんが尋ねてくる。
「え、ああ。スイーツ友達だよ。さっきまでカフェにいたみたいで、差し入れを持ってきてくれたの」
そう言って、手に持っていた紙袋を持ち上げる。
「それと、実家のカーポートが壊れたらしく、修理の相談もあったみたい」
「へぇ、そうなんだ。スイーツ友達……ね」
新庄くんは片眉を上げ、どこか含みのある言い方をする。
どうしてそんな言い方をするんだろう、と首を傾げたとき、女の子の声がした。
「すみませーん、ふうせんください」
はっと我に返り、すぐに気持ちを切り替えて笑顔を浮かべる。
「なに色の風船がいい? ピンクにオレンジ、黄色とかいろいろあるよ」
女の子は少し迷いながら風船をじっと見つめる。
そして、希望の風船を指差した。
「うーん、ピンクがいい!」
「ピンクね、はいどうぞ」
私は棒付きのピンク色の風船を手に取り、女の子に差し出した。
「ありがとう」
女の子は嬉しそうに受け取ると、風船を揺らしながら両親のもとに走っていった。
ふと、視線を感じて振り返ると、新庄くんがじっとこちらを見ていた。
「どうかした?」
「いや、なんでもないよ。明日でイベントも終わりだな」
「そうだね。前回と違って今回はちゃんと携われたから、いい経験になってるよ」
ブースを任されて、改めて責任の重さを噛みしめる。
大変なこともあったけど、だいぶ臨機応変に動けるようになった気がする。
明日も最後まで、ちゃんとやり遂げたい。
「じゃあ、俺も自分のブースに戻るわ」
「うん。じゃ」
新庄くんが自分のブースへ戻っていく。
その背中を見送り、私は新しい風船を手に取った。