嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
翌日。
昨日の町田さんの告白の影響からか、会社へ向かう足取りがいつもより重い。

どんな顔をして会えばいいんだろうとか、普段通り振る舞えるかなといった不安が頭の中を占めていた。

出社して席に着いても落ち着かず、どこかソワソワしてしまう。
パソコンを立ち上げていたら、町田さんがいつもの笑顔で声をかけてきた。

「おはよう、麻里奈ちゃん」

「お、おはようございます」

声が少し上ずってしまった。
だけど、町田さんは特に気にする様子もなく、メモを数枚差し出してきた。

「悪いんだけど、この見積書、入力してもらっていい?」

「分かりました」

「できれば今日中に仕上げてもらったら助かる」

「今日中ですね。でき次第、お渡しします」

「よろしく」

軽く手を挙げて、自分の席へ戻っていく町田さん。
私はその背中を見送りながら、小さく息を吐いた。

昨日の出来事なんてなかったかのように、町田さんは本当にいつも通りだった。
そんな彼の優しさが嬉しいような、申し訳ないような複雑な気持ちになる。

でも、ここで私が意識して、変な態度を取るのは絶対に駄目だ。
町田さんからも『今まで通り接して』と言われている。

私も普段通りでいよう。
心の中でそう言い聞かせ、見積書に視線を落とした。

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