嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「え、ちょっと待って!」

駅前にはたくさんの人がいる。
こんなところをお姫様抱っこされたまま歩くなんて、恥ずかしすぎる。
すれ違う人の視線が、すべて向けられているような気がして、顔が一気に赤くなった。

「いいよ、自分で歩けるから」

「うるせぇな。おとなしくしないと、今すぐキスするぞ」

えっ?
今、なんて……。
あまりにも衝撃的な言葉に、ピタリと動きを止めた。
冗談、だよね?
新庄くんには彼女がいるんだから、そんなことをするはずがない。
そう思うのに、頭の中が混乱していた。
固まっている私を見て、新庄くんがふっと笑う。

「いい子だ。そのままおとなしくしてろよ」

子どもに言い聞かせるような、優しい声を出す。
その声に、私の心臓は大きく跳ねた。

新庄くんの言動に振り回されて、心がついていかない。
そんな私の状態なんて気に留めることなく、彼は真っ直ぐ前を向いて歩いていく。

もう無理だ。
流れに身を任せるしかないと、私は抵抗することを諦めた。

周囲の視線が気になって仕方ない。
恥ずかしくて顔を上げることができず、私はギュッと目を閉じる。

新庄くんの腕の中は温かかったけど、心は全然落ち着かない。

忘れようとしていたのに、どうしてこんなことになったんだろう。
彼女のいる新庄くんに、抱きかかえられているという状況に強い罪悪感がこみ上げていた。

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