嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「だから気になって、追いかけたんだ。そしたら、桜井が転んで泣いてるし」

「仕方ないじゃない、痛かったんだから」

そう返しながらも、恥ずかしくなって視線を落とす。
転んで泣くとか、子どもみたいで情けなくなる。

「本当になにもないのか?」

そう尋ねられ、顔を上げると新庄くんがじっと私を見る。

「俺たち、なんでも言い合える同期だろ。別にさ、言いたくないことまで無理に聞くつもりはないけど、嘘つく必要なんてないんだから」

「嘘なんてついてないよ」

思わず、強い口調で言ってしまった。

"嘘”という言葉に敏感になっている私がいる。
本当の気持ちを隠して、なんでもないふりをして、嘘をつくことでしか自分を守れなかった。
思い出したくもない、苦しい日々がよみがえり、胸が痛くなる。

「それにさ、同期だからって、なんでも話せるわけじゃないから」

「それはそうだけど……。でも、いつもの桜井らしくない」

新庄くんの言葉が、刃となって胸に突き刺さる。

好きっていう気持ちを隠し、苦しくても平気な振りをしていた。
自分の気持ちに嘘をつき続けているのが、私らしいっていうの?

新庄くんになにが分かるっていうんだろう。
今までずっと我慢してきて、辛かった想いが一気に溢れ出した。

「私らしいってなに?」

「えっ」

「自分の気持ちに嘘をついて、なんでもない顔をして笑ってるのが私らしいの?」

「桜井?」

新庄くんが少し戸惑ったような表情で私を見ていた。

これ以上喋ったら、ボロが出るのは分かっている。
だけど、理性では感情を抑えきれなくなっていた。

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