嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「好きな人に好きって言えなくて、一生懸命誤魔化して。なんでもないふりをして、笑顔でいなきゃいけない私の気持ちなんて、新庄くんには分からないよ」

完全に八つ当たりだ。
そんなことを新庄くんに言うのは間違っている。
分かっているけど、言わずにはいられなかった。
目には涙が滲み、悔しくて唇を噛んだ。

「……なんで、好きな人に好きって言えないんだよ」

新庄くんは冷静に聞き返してくる。
ホント、残酷だよね。

新庄くんの彼女の話題が出るたび、私がどれだけ傷ついたと思ってるの。
私の方が、あとから出会ったんだから仕方がない。
そう何度も、自分に言い聞かせてきた。

諦めなきゃいけないのに、全然それができない自分が本当に嫌だった。
いつもいつも自分の気持ちを押し殺して、嘘をつくことしかできなかったけどもう限界だ。
私の脳内で『もう隠さなくてもいいじゃん。自分の想いを全部話しなよ』という声が聞こえた気がした。

「言えるわけないじゃない。私が好きなのは新庄くんなんだから」

「えっ?」

新庄くんの目が、大きく見開かれる。
その顔を見た瞬間、終わった……と思った。

新庄くんには彼女がいる。
そんな人に好きだと言ってしまった。
もう、ただの同期には戻れないだろう。

以前、ネットで調べた『好きな人を諦める方法』で、振られる覚悟で告白するという一文があった。
これはないな、と思っていたけど、勢いで告白してしまった。

気持ちを伝えてしまったことには後悔はないけど、気まずすぎる。
これからどうしよう。
会社でも顔を合わせるんでしょ?
ちょっと今は、まともに新庄くんの顔が見れない。
そうなると、次の行動は"逃げる"の一択だ。

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