嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「私、帰る」

そう呟き、ソファから立ち上がってリビングを出ようとした。

「待って」

新庄くんに腕を掴まれて、それは叶わなかった。

「なに勝手に帰ろうとしてるんだよ」

「離して。帰るから」

あんなことを口走っておいて、ここにいられるわけがない。
できることなら、そっとしておいてほしい。

必死に抵抗して腕を振っても、新庄くんの手はびくともしない。

「帰すわけないだろ」

「嫌だ、離してよ」

「離さない」

離して、離さない、という押し問答を繰り返し、なかなか決着がつかない。

「お願いだから、離して」

「無理。なぁ、さっきの言葉は本当なのか?」

私の願いはアッサリ却下された。
なによ、なんなのよ!

新庄くんに掴まれた腕が熱い。
射抜くような眼差しを向けられ、心臓があり得ない速さで動いている。

もう、こうなったらヤケクソだ。
新庄くんのことを好きだと言ってしまったので、もうあとには引けない。
なるようになれ!だ。

同期としてとか今さらだし、どうせ振られるなら最後に思う存分、気持ちをぶちまけてスッキリしようと開き直った。

「あー、そうです。本当ですよ。彼女がいる新庄くんのことが好きですけど、なにか?」

いつにもまして、強気な言葉でその場を乗り越えようとした。
そうでもしなきゃ、まともに立っていられない。
今にもこぼれ落ちそうになる涙を必死に堪える。

「本当に俺のことが好きなのか?」

「しつこいな。さっきからそうだって言ってるでしょ」

キッと睨みつけた。
すると、次に瞬間、新庄くんが私を抱きしめてきた。
突然のことに頭が真っ白になり、体が固まってしまう。

どうして、新庄くんは私を抱きしめているの?

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