嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「なんだよ、早く言えよ」

新庄くんは、ほっとしたように安堵の息を吐く。
この人はなに言ってるの?

「バカ言わないでよ。無理に決まってるでしょ。彼女がいる人に……」

弱々しく呟く。
どうして、こんな惨めなことを言わなくちゃいけないんだろう。

これ以上、心がボロボロになってしまう前に、早く解放して欲しい。
そう思っていると、新庄くんは腕の力を緩め、真っ直ぐに私を見つめた。

「いないよ、彼女なんて」

「へ?」

その言葉に耳を疑った。
彼女はいないってどういうこと?
呆然としたまま、新庄くんを見つめる。

彼の真剣な表情から、冗談を言っているようには見えない。
だけど……。

「さっき、一緒にいたのが彼女でしょ。前にも二人で歩いているところを見たし」

「違うよ。あれは兄貴の奥さん。俺の幼なじみでもあるけど」

「へっ……?」

思わず、間の抜けた声が出た。

「アイツ、兄貴とケンカしたらしくて、俺を呼び出したんだよ。マジで怠いんだけど」

新庄くんがため息混じりに言う。

「それで、愚痴を聞きながらコンビニで買い物してただけ。あのあと、兄貴に迎えに来るように連絡したから」

頭の中が追いつかない。
新庄くんのお兄さんの奥さんで幼なじみ?
説明されて、さっきの女性の誤解は解けたけど、引っかかることはまだ残っている。

「飲み会でしてたよね、彼女の話?」

「あー、あれか」

私が尋ねると、新庄くんは苦笑いした。

「言っとくけど、飲み会のときに俺から彼女の話をしたことは一度もないからな」

確かに、新庄くん発信で彼女の話をしていたのを聞いたことは一度もない。

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