嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「俺は、先輩に聞かれたから答えただけ。で、彼女の話だけど、入社当時はいたけど、すれ違いが続いてかなり前に別れてる」

その言葉に絶句した。

――かなり前に別れている。
じゃあ、この前の飲み会で話していた結婚の話は、一体なんだったの?
相手がいるから、将来的に結婚したいとか言ったんじゃないの?

頭の中に、次々と疑問が浮かんでくる。
もう、なにがなんだか分からない。

「ねぇ、かなり前っていつ?」

気づけば、口からそんな言葉が出ていた。

「んー、一年以上前」

新庄くんは顎に手をあて、少し考えてから答える。

「一年以上前って……」

嘘でしょ。
そんな前に別れていたなんて思わなかった。

彼女とは別れているのに、どうして今までそれを言わなかったんだろう。
なにか理由がある、とか?
それが気になって尋ねてみた。

「じゃあ、なんで彼女がいるみたいな言い方をしてたの?」

「別に、意図的に彼女がいる振りをしたわけじゃないよ。別れたことを、いちいち会社の人に報告するのも面倒だったから、そのままにしてただけ」

な、なによそれ……。
あまりにもあっさりとした答えに、言葉も出ない。

私はずっと、新庄くんに彼女がいると思っていた。
飲み物で、彼女の話が出るたびに胸を痛めていた。

自分の気持ちに嘘をついて、何度も諦めようとしていたのに。

「……信じられない」

力が抜け、崩れ落ちそうになる私の体を、新庄くんがしっかりと支えてくれた。
そして、ソファに座るように促される。

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