嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「大丈夫か?」

「……うん」

そう答えたけど、大丈夫なわけがない。
もっと早く言ってくれればよかったのに。
一年以上も、新庄くんに彼女がいると思って悩んで苦しんできた。

文句のひとつでも言ってやりたい。
視線の先では、新庄くんが悔やむように唇を噛みしめているのが見えた。
その表情を見た瞬間、彼を責める気持ちは自然と萎んでいった。

「俺の話、聞いてくれるか?」

新庄くんは小さく息を吐くと、静かに話し始めた。

「入社して三ヶ月くらい経った頃、仕事でミスしてさ。先輩にめちゃくちゃ怒られて、かなり落ち込んだことがあったんだ」

その言葉を聞いて、記憶を辿った。

入社して三ヶ月――。

そういえば、あの頃は私も仕事でミスをして、毎日のように悩んでいた。
新しい環境にも慣れなくて、なにをするにも必死だった。
新庄くんも、同じように仕事で悩んでいた気がする。

二人で飲みに行ったときに、お互いに仕事の悩みを打ち明けて励まし合った。
そんな時間を重ねるうちに、同期としての距離が少しずつ縮まっていった。

気づけば、なんでも話せる関係になっていた。
いつからだったか、明確には分からないけと、私は新庄くんのことを意識し始めていた。

「そのミスを取り返そうと必死になってたから、飯を食い損ねるのは日常茶飯事だった。終電近くまで残業して、家に帰ったら寝るだけっていう生活をしてたんだ」

新庄くんは遠くを見つめながら話す。

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