嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~

「俺は、桜井のことが好きだ」

え、新庄くんはなんて言ったの。
頭が真っ白になった。

聞き間違いじゃないよね?
次々と告げられる言葉に、思考が追いつかない。
心臓がバクバクと大きな音を立てる。

「伝えるのが遅くなってごめん」

新庄くんの声は、今までに聞いたことのないぐらい優しくて、どこか切なさが混じっていた。

「もし、気持ちを伝えて拒絶されたら……とか、気まずくなって今までみたいに笑い合えなくなったら、って考えたら怖くて動けなかった」

新庄くんは、視線を落として小さく息を吐いた。

「桜井に距離を置かれるぐらいなら、自分の気持ちを隠したままでいようと思っていたんだ」

その言葉を聞いてはっとする。
じゃあ、新庄くんも私と同じように、自分の気持ちに嘘をついていたってことなの?

「自分でもヘタレだって思うけど、桜井の隣に他の男がいるのを見て我慢できなくなった。もう、なりふり構っていられないと思ったんだ」

そう言って、私を見つめる彼の瞳には熱が宿っているように見えた。

ずっと叶わない片想いだと思っていた。
自分の気持ちに嘘をつき、諦めようとしていた想いが、こんな形で報われるなんて夢みたいだ。
これは一体、なんのご褒美だろう。

胸がいっぱいになり、視界がじんわりと滲んでいく。
涙がポロリとこぼれ落ちると、新庄くんは困ったように眉を下げる。
そして、頬を伝う涙を親指でそっと拭った。
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