御曹司と恋のかけひき

29話

相変わらず2人は早かった、2人というのは、お母さんと直哉さんである。

喫茶店で直哉さんが言っていたように、
結婚式場はいくつかピックアップされており、
いくつか質問の後、ここねと式場を決めてしまった。

細かい事は、コーディネートの人がサポートするとは言え、
お母さんと直哉さんが積極的に話を進めていく。

世間では、彼女が結婚式のプランを立て、
彼氏が手伝ってくれないと不満がありそうだが、
全く逆で、私はいくつか質問に答えるだけで、ほとんどお任せである。

直哉さんから、お母さんとは仲が悪いと聞かされていたが、
この家に来てから、そう感じた事は一度もないし、
結婚式の打ち合わせをする2人は、むしろ気が合っているように見える。

藤沢邸に来て3週間、仕事へ行き、週末には観光、食事は家で、という日常。

結婚式は5か月後と決まっていた。

ちなみに、直哉さんの部屋で眠るのが普通になり、
週4回ぐらいは体を重ねている。

問題は何もない。

ちゃんと、好きだと思ったし、

そう、問題はないはず。

ただ、あまりにもスピードが速く、
自分は日常をこなしているだけなのに、周りが目まぐるしく変わっていく。

直哉さんに預けていたおばあ様の指輪は、私の元に戻ってきて、
その時には、サイズも私のサイズに合わせてあった。

私のは、透明なダイヤだが、おばあ様のダイヤはピンクで、
当時からかなり貴重な物だと聞いていた。

2つの指輪を眺めて思う。

そう言えば、おばあ様の指輪をもらったのも、この家に来てすぐ、
かなり早かったような・・・

何となく、違和感を覚える。

京子さんにラインをすると、休みなのかすぐ返事が返ってきた。

『当然逃がしたくないわよ、直哉さんの恋のかけひきにはまっているのね』

とかえってきた、

恋のかけひき?

私はかけひきなんて少しもしていない、

直哉さんが、私にかけひきをしているの?

逃がしたくないって・・・

前も、よく分からない事があったが、京子さんの分析は当たっていた、

多分今回も、私がにぶいだけで、京子さんが正しいのだろう。

『直哉さんにとって、万里ちゃん以上の女の子なんて、絶対ないって事よ』

ありがとうと返事をして、ラインを終わらせる。

今まで別れた15人の彼女と何があったんだろう。

過去を気にするタイプではないし、まったく聞いた事もなかったが、
少し気になってしまった。
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