御曹司と恋のかけひき

3話

約束の土曜日。

11時に会社の最寄り駅で待ち合わせ。

18分前に電車が駅に着き、少し早いかなと駅の時計を確認しながら、
ロータリーへ向かう。

すると、白い車から、1人の男性が降りてくる。

「こっちだよ」

あわてて腕時計を確認するも、やっぱ18分前。

少し駆け足で車に近づき声をかける。

「お待たせしてしまいました?」

「いや、早く着いたんだ。さあ、乗って」

助手席を開け、待っていてくれる。

すみません、と言って車に乗り込む。

「観光でいいんだったよね」

「はい」

メールで、どこに行きたいと聞かれた時、
就職で東京に出てきたものの、仕事に慣れるのに忙しく、
どこがいいかまったく分からないと返信し、
それなら、定番スポットを巡ろう、という約束になったのだ。

「メイク変えた?」

余裕の表情で、ハンドルを切りながら話かけてくる。

「え?」

「雰囲気が違うっていうか、いつもにも増して女の子ぽいっというか・・・」

「分かります?」

「うん、かわいいよ」

確かに、いつもはしっかり赤を主張するリップに、茶色のアイシャドウ、
今日は、グロスを塗るだけで、ピンクのアイシャドウをしている。

しかも、さらりとかわいいって。

こうゆう所がもてるんだろうなと、ちらりと藤沢さんを見る。

そうゆう藤沢さんも相変わらずかっこいい、
ただ、私は声に出す勇気はなく、心の中でだけ再確認する。

「どこへ向かっているんですか?」

行き場所は当日のお楽しみになっていた。

「お台場だよ」

「パレットタウン、観覧車があるんだ、ショッピングもできるし、
東京ジョイポリスってジェットコースターが乗れる所もあるけど?」

「あ、ごめんなさい、ジェットコースターは無理で」

「分かった」

運転はあまり車に乗った事がない私でもわかる程上手で、
寝不足なら、すぐうとうとしてしまいそう。

「音楽かけよう、洋楽でいい?」

「はい、お願いします」

いたせりつくせり。

快適すぎて、申し訳ないというか。

その後は得に話すでもなく時間が流れ。

恋人の条件に、何もない時間が快適である事ってあった気がするけど、
こうゆう事なのかな?
ほぼ始めて会うのに、すごく自然というか、無理してないと言うか、
ただ、これも女慣れのゆえだったら複雑だな・・・

そんな事を考えながら、窓の景色を楽しんでいた。
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