好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】
毎朝庵に来てくれていたことだ。
一抹の淋しさを感じたが、付き合っていく以上、傍にいられないときがあるのも仕方のないこと。
「ん、わかった」
真紅は出来るだけ笑むことを心掛けたが、黎の顔は浮かない。
けれどこんなところで我儘を言うのは違うと思ったし、黎の進んでいる道の邪魔をしたくもない。
望んだ進路でなくても、黎はそれに反旗しようとはしていないから。
しばらく逢えなくなるのなら、憶えていてもらうのは笑顔がいい。
だから、真紅は笑った。
「――梨実、少し真紅を借りてもいいか?」
「どーぞ。ちゃんとあたしのとこに返してくださいね?」
「ああ」
海雨に応えて、黎は真紅の腕を摑んで立ち上がらせた。