好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】


問われて、海雨は視線を落とした。
 

澪が真紅に厳しくしている理由を、海雨は知っている。


真紅が海雨に総てを話したと知った澪から伝えられたのだ。


だから海雨は、真紅をかばいこそすれ澪を糾弾してはこなかった。


「はい……」
 

海雨が素直に肯くと、澪は軽く息を吐いた。


「前にも言ったけど、お嬢さんが望んでいるのはそれこそいばらの道だよ。正統後継者として黒の若君がいるところへ、急に現れた始祖の転生。

小路の中枢の人間はお嬢さんが生まれた時から知っていたようだけど、ほとんど秘されていた存在だ。

慣習的に始祖の転生は当主になってきた。けれどお嬢さんの力は――今はまだ、黒の若君には遠く及ばない。いや、鬼の力を持つ若君に敵う奴なんているかもわからないくらい、黒の若君は別格だ。

でも、お嬢さんを当主に、って話はもう出ている。そんな重要な位置にいるお嬢さんが、伴侶に黎を望んだって反対を喰らうだけだ。現状、黎は立場があやふやでもあるしね。

立ち向かって行く壁は、黎とお嬢さんにはあり過ぎるくらいだ。俺程度の嫌がらせで投げ出すようだったら、お嬢さんに黎との未来はない」


「………」

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