お願い!嫌にならないで
「中谷さんには、水野さんとのことで、アドバイスをもらったり、喝を入れてもらったんです。水野さんのことも、誰より心配していたし。ね? 中谷さん」
中谷さんは恥ずかしがりながら、静かに頷く。
「だから、結果報告はしておかないといけないと思って。だからと言って、約束を破ったことは謝ります」
水野さんに向かって頭を下げる。
これから付き合っていくのに、いきなり約束を破るなんて、かなり印象が悪い。
きっと怒られる。
むしろ、それだけで済むだろうか。
恐ろしくて、頭を下げた体勢から動けなかったが、間もなくして、優しい声が降ってくる。
「ごめんなさい」
謝罪の返しが、まさかの謝罪で思わず戸惑った。
「私がみんなに知られるのが気まずいからって……息苦しかったですよね。あきちゃんも、辻さんもすみませんでした」
今度は水野さんが、頭を下げ返す。
約束を守らなかった俺が悪いのに。
叱ってくれたっていいのに。
──本当に優しい人だなぁ。
胸の奥がグッとなる気がした。
すると、しばらく放置されていた山本くんが、慌てた様子で会話に入ってくる。
「いやいやいやいや……そんなことよりも。いつからですか? 2人がそんなことになってたのは」
「おお。山本さんも、興奮とかするんですね」
「それ、どうでも良いですから!」
アルコールが入ると、山本くんはテンションが上がるタイプらしい。
ずっとこうだと、さすがに面倒臭いが、たまにはこんな山本くんも良い。