お願い!嫌にならないで



「中谷さんには、水野さんとのことで、アドバイスをもらったり、喝を入れてもらったんです。水野さんのことも、誰より心配していたし。ね? 中谷さん」



中谷さんは恥ずかしがりながら、静かに頷く。



「だから、結果報告はしておかないといけないと思って。だからと言って、約束を破ったことは謝ります」



水野さんに向かって頭を下げる。

これから付き合っていくのに、いきなり約束を破るなんて、かなり印象が悪い。

きっと怒られる。

むしろ、それだけで済むだろうか。

恐ろしくて、頭を下げた体勢から動けなかったが、間もなくして、優しい声が降ってくる。



「ごめんなさい」



謝罪の返しが、まさかの謝罪で思わず戸惑った。



「私がみんなに知られるのが気まずいからって……息苦しかったですよね。あきちゃんも、辻さんもすみませんでした」



今度は水野さんが、頭を下げ返す。

約束を守らなかった俺が悪いのに。

叱ってくれたっていいのに。

──本当に優しい人だなぁ。

胸の奥がグッとなる気がした。

すると、しばらく放置されていた山本くんが、慌てた様子で会話に入ってくる。



「いやいやいやいや……そんなことよりも。いつからですか? 2人がそんなことになってたのは」

「おお。山本さんも、興奮とかするんですね」

「それ、どうでも良いですから!」



アルコールが入ると、山本くんはテンションが上がるタイプらしい。

ずっとこうだと、さすがに面倒臭いが、たまにはこんな山本くんも良い。



< 220 / 239 >

この作品をシェア

pagetop