お願い!嫌にならないで
「うんざりする程、緑ばっかりですよ。でも、是非、一回来てみてほしいです」
「是非、行ってみたいです」
途切れた水野さんの話題を引き戻す。
まだ話したいことがあったから。
「それで良ければなんですが、両親に水野さんのことを紹介したいなぁ、なんて」
俺が言うと、水野さんは唖然とする。
「でも! 嫌なら、急ぎません! 水野さんのペースに合わせます」
「嫌な訳、ないです……」
「え…………もしかして泣いてます? なんで……」
水野さんは強がって居ても、目が潤んでいるのは、よく分かっていた。
「な、泣いてません。失礼かもしれませんけど、私とのこと、そこまで真剣に考えてくれてると思ったら……」
「もちろん考えますよ。ほらほら、泣いてるじゃないですか……」
抱き締めて、頭を2度撫でる。
昨日からスキンシップをし過ぎているように思うが、もうそこは一切気にしない。
「ちゃんと、紹介させてください」
俺の腕の中で、水野さんが何度も頷く。
背中をポンポンと優しく叩いた。
水野さんが落ち着くまで、そのままで居た。
そして、その後、リビングのテーブルで朝食をとる。
トーストを頬張り、もう一つ提案が浮かんだ。
俺ばっかり、申し訳ない。
「あの、これも良かったらなんですけど」
水野さんが口をモグモグさせて、こちらを向く。
「もう1人報告したい人が居るんですけど」
「え、誰ですか?」
「大将」
一度「大将?」と首を傾げられたが、直ぐに思い出してくれたようだ。
「あの焼き鳥の美味しい、居酒屋さんの……!」
「覚えてくれてたんですね」
「そりゃ、あの焼き鳥の味は忘れられません」
「じゃあ、久しぶりに今日、夜行きませんか」
「はい……!」
目を輝かせて、何でも喜んでくれる彼女。
思わず、つられて口元が緩む。
我慢なんてせず、いつまでもその無邪気な笑顔を見せてほしい。
これからも、俺に守らせてください。
大好きな、その笑顔を。
大好きな水野さんを。
お願い!嫌にならないで
(俺を信じてください)
おわり。


