お願い!嫌にならないで
「私、辻さんと居るだけで、ホッとして、温かい気持ちになるんです。昨夜もつい心地好くて……」
色白の肌にピンクを通り越して、真っ赤な頬。
その頬に、触れに行く。
「相変わらずですね」
「何がですか?」
「そうやって、直ぐに真っ赤になっちゃうの」
俺が営業部へ異動してきて、初めて事務所前で出会したときも。
俺の歓迎会で、外で頭を冷やしていた水野さんの元へ駆け付けたときも。
体質、癖だと思っていた。
でも、今は俺だけに向けられた、彼女の精一杯の表情。
──ああ、幸せだ。
「今日、土曜日ですし。水野さん、予定とか何も無ければ……せっかくの休み、一緒にゆっくりしませんか」
「はい。今日は、何も予定は無いです」
「じゃ、コーヒー淹れますね」
「私も手伝います」
欠伸をしてキッチンへ向かう俺の後を、駆け足でついてくる。
そして、コーヒーメーカーを出しながら、トーストを焼いて、2人で遅めの朝食の準備をする。
すると、水野さんが角に置いてあった、段ボールを見つけた。
「昨日も気になってたんですけど、野菜いっぱいですね。自炊するんですか?」
「人並みにですかね。実家が田舎なもんで、送ってもらうんですよ。良かったら、持って帰りますか」
「良いんですか」
「腐らせたら、勿体ないので。むしろ、助けてください」
「ありがとうございます。戴きます。でも、こんな立派なもの……ご実家は農業されてるんですか?」
「兼業農家ですよ。趣味でゆるーくしてる感じの」
「それでも、凄いです。きっと自然豊かな──」
言葉の途中でコーヒーメーカーが、抽出終了を告げるアラームを鳴らした。
水野さんは先程までの話の余韻で、ニコニコしながらコーヒーをマグカップへ注ぐ。