キミへ告げる想ひ

3,

そして、長い夏休みもあっという間に過ぎ去っていった。

夏休みがあけるとすぐに体育祭がやってきた。

残暑の厳しい九月の下旬だった。

今日もよく晴れていた。

体育祭を無事に開催できた今日は、平日だった。

なので、見に来る保護者は少ないだろう思っていたが、

意外にもかなり多くの人たちが美里高校に足を運んでくれていた。

桂碁は全体でやる種目にだけ出場することにしていた。

あんまり運動は得意な方ではなかったので、

挙手制の種目は参加しないことにしたのだった。

学年種目として一年生は二人三脚リレーをやることになっていた。

この学年は全クラスで十五クラスあった。

それをほぼ四等分した四クラスごとに走ることになった。

桂碁は愛斗と走った。

やはり長い間一緒にいるだけあって、

コンビネーションは抜群だった。

桂碁が出る午前中の種目はあとは、大縄だけになった。

全体で三回行うのを、桂碁は一回しかやらなかった。

午後の一発目の種目は部活動対抗リレーだった。

ギター部は、参加しないようだった。

けれども驚いたことに、そのころから雨がぱらつき始めていた。

「雨、強くなってきたね…」

先生がポツリと呟いた。

リレーが終わりに向かうにつれてゆっくりと、雨は強くなっていた。

次の種目に入る頃には、雨も本格的に降り出していた。

傘を持ってない人は、相傘や木の下に入ったりしていた。

桂碁もその一人だった。

まだ五、六種目ほど残っていた。

けれどもう、続けることは不可能に近い降り方になっていた。

「まだ種目はありますが、

保体男子の集団行動を最終種目として、

今年度の体育祭は閉幕としたいと思います。

それにともない、閉会式は執り行いません」

体育科の先生は全校生徒に向かってそう言った。

こういうことは桂碁にとって、初めてのことだった。             
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