あのとき離した手を、また繋いで。
これ以上、夏希に心配ごとを増やしてほしくない。
「じゃあ俺が」
「……?」
「モナちゃんのこと支えるね?」
さらっと言われた言葉。
横顔を見ると、目があってはにかんでいた。
なぜだかすこしイラッとした。
「……なに男前みたいなこと言ってんの」
「男前っしょ」
「清水さんに発揮しなよ」
「はは!言えてる」
「ばーか」
膝あたりに蹴りを入れると「いてぇ!」と大袈裟なリアクションが返ってくる。
水無瀬くんと、こんなにも仲良くなれるなんて思ってもみなかった。
男女の友情だなんて言ったらまた誰かにバカにされそうだし、私のイメージからしたらただの男タラシってことになりそうだけど。
水無瀬くんとの間に、お互い、下心なんて1ミリもない。
それがわかるから励ましの言葉も、帰りのお誘いも、疑いなく乗れるんだ。
……だから。
「なに、これ……」
次の日、朝、登校した私の目に映った光景に小さく声を漏らした。
黒板に書かれたド派手な文字は【橘モナは二股オンナ】と大々的に書かれており、そのほかにも相合い傘の下に私と、それから水無瀬くんの名前が書かれてあったりと、悲惨なものだった。
黒板全体を埋めつくすカラフルは文字たちはすべて私に敵意をむき出しにした言葉を紡いでいた。
それをクラスメイトたちは凝視していて、登校してきた私に気づいたのか、気まずい空気が流れる。
夏希と水無瀬くんはまだ学校に来ていないのか、いない。清水さんはいた。
「おはよ。っ、んだこれ……!」