あのとき離した手を、また繋いで。


だから夏希。私は大丈夫だよ。

私はもう泣いたりしないよ。強く、なるよ。

どんな意地悪をされても、どんな運命に翻弄されたって君のことをずっと想うよ。


約束するから……だからどうかお願い。


この自分の第6感がうったえかけてくる、危険信号を、どうかとめて。

どうしようもない不安を、誰でもない夏希の手で払拭してほしい。


私たち、ずっと一緒にいられるよね?


あのときは信じてなかった"永遠"を、私は信じているよ。


ねぇ、夏希。私たち、大丈夫だよね?



***



夏希はなにか思いつめているようだった。
悩んでいる、とでも言おうか。
とても彼らしくない日々は4日ほど続いた。


あからさまに避けられることは2日目からはなかったけれど、一緒にいてもどこかうわの空で、心ここに在らずといった感じだった。


会話をしていても弾まず、私の話は終始聞き逃していた。


そして、5日目の朝。



「橘さん」



学校に登校してすぐ、ローファーからうわぐつに履き替えていた私に声をかけたのは黒木さんだった。


条件反射のように身体が硬直した。



「話があるんだけど」

「……なに?」

「ここじゃちょっと……」



人目を気にしている黒木さんの瞳は地面を見つめていた。


仕方なくふたりで場所を移すことにした。
彼女の後ろを歩いて向かったのは図書室だった。
朝の図書室には先生すらいないことを入学して2年目にして初めて知った。



「なに、話って」



あまり黒木さんと一緒にいたくなくて、話をこちらから早めに切り出した。



「私、夏希に告白した」



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