愛し紅蓮の瞳
「あ、あの……」

「蘭、話すと長いのよ。詳しくは光蓮様からお話があると思うから、今は東雲家に急ぎましょう」


不安を楓さんにぶつけようとした私を、優しく微笑んだ楓さんは遮った。


「大丈夫、不安に思うことはないわ。東雲家も皆、いい人ばかりだし、もちろん私も一緒に光蓮様のお話を聞く」


だから安心しなさいと続けて微笑む楓さんに、もう何も言えなかった。楓さんが大丈夫だと言うのなら、多分 大丈夫だ……そんな気がしたから。






***


「光蓮様、ただいま戻りました。紫黒の巫女……涼風 蘭殿をお連れしました」



私は今、ただただ戸惑っている。


東里家の離れもそれなりに大きかったけれど、平屋の一軒家って感じで、私の住んでた世界でもよく見かける大きさだったし、特に何とも思ってなかった。


でも、東雲の本家は東里の離れとは比べ物にならなかった。


同じく平屋とは言え"光蓮様"のお部屋に辿り着くまでに、かれこれいくつ部屋があっただろう。


長〜い廊下を摺り足で、さらには慣れない着物を来て奥まで進み、やっとこさ辿り着いたこの部屋は7帖ちょっとくらいの畳の部屋。


そこには"光蓮様"と呼ばれる、東雲家の現当主様らしい男が1人、静かに私を待っていた。
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