愛し紅蓮の瞳
「ほぉ、ほんに見事な紫黒色だ。髪だけではなく、瞳もとは……蘭殿、それから楓殿も良く来てくれたね。虎太もご苦労だった」



虎太くんは光蓮様に小さく頭を下げると、そのまま部屋の隅っこに胡座をかいて座り、楓さんもまた、光蓮様に小さく頭を下げた。



え、何?
光蓮様って、そんなに偉い人なの?


何した人?なんでこんなに敬われてるの?私も頭下げた方がいい?え、どうするべき?



「蘭、このお方が東雲家2代目当主、東雲 光蓮(しののめ こうれん)様です。ご挨拶を」


「へっ……あ、あの!初めまして、涼風 蘭と申します」



楓さんの突然の言葉に、頭が真っ白になる。ご挨拶って、名前だけでいいのかな?もっとこの世界には色々とあったりする?




もう、この世界では何が常識で何が非常識なのか私には判断出来ないから嫌になる。


「そうかしこまらずに、楽にして少し私の話を聞いて欲しい」



光蓮さんは強面の見た目からは想像もつかないほどフワリと柔らかく笑うけど、かしこまらなくていいなんて、そんなの無理な話だ。


体中に力が入って、もう自分ではどう力を抜けばいいのかまるで分からない。
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