愛し紅蓮の瞳
「……私には笑って?」


「は?」


「光蓮様が言ってた。紅蓮の醜い感情で鬼は力を強めるんだって。……なら、沢山笑ったら?そしたら、鬼の力は弱まるかもしれない」


「お前……」


私の髪を優しく撫でる紅蓮の仕草にまたドクンと大きく心臓が高鳴った。


のも、つかの間


「本物のバカだな」


意地悪く呟かれた紅蓮の言葉に、ムッとする。


すかさず言い返そうと口を開けば、さっきまで髪を優しく撫ででいたはずの紅蓮の手によって鼻を摘まれて言葉に出来ないまま紅蓮を見上げた。


絶賛、口呼吸中だ。





「そんな考え、俺にはなかった」


「でも、悪くないでしょ?」


「……そうだな。手始めに腹踊りでも見せてみろよ。嫌ってくらい笑ってやる」



やっぱり、この男は嫌いだ。
私は善意で発言してるってのに、コイツからは多大なる悪意を感じる。


少し乱暴に鼻を解放した紅蓮は、そのままスッと立ち上がると部屋の奥へと静かに歩いていく。



そして、途中で私を振り返ると



「来い。バカと話したら疲れた。今日はもう寝るぞ」


それだけ呟いて私の返事を待っている。



「……え、」



あれ?
おかしいな。空耳かな。


"寝るぞ"って聞こえた気がした。


いやいや、そんなはずない。
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