狂愛彼氏


あまりのキラキラした笑顔に、逃げたくなったが、何とか踏ん張った。


「な、なに?」

「顔、貸して」

「………………は?」

「ふふー、あたしが化粧してあげる」


腕捲りまでする愛麗。


「否、別に、」


遠慮します、と言う前に、愛麗に頬を片手で挟まれた。


「わからせてあげる」

「ふぁにほ(なにを)?」


愛麗は、パッと私を離す。
若干、ヒリヒリする。
頬を擦りながらチラリと愛麗をみると、鼻歌を歌いながら準備している。


「本当は、あんたに化粧したくないんだけど」

「だったらしなきゃいいじゃん」


ムッとする。


(どうせ救いようがないわよ)


私の態度に愛麗は瞬きをすると、小さく笑う。


「なんか勘違いしてない?」

「何が。どうせ私の顔は化粧しても駄目でしょうよ」


私は、地味で可愛くないんだから。
愛麗とは違うもの。


そう言うと、愛麗は、肩を竦めながら勘違いしているよ、と言った。


「そうじゃないわよ」

「?」

「…………良いこと教えてあげようか」


ニッコリと愛麗は、化粧水をコットンに含ませて、髪を上げられた私の頬に当てる。化粧水があるなんて、ホント愛麗は学校をなんだと思ってるのか………。


私は、されるままになりながら愛麗の顔を見た。
化粧の施された顔。


(そう言えば、何時からだっけ?)


愛麗が、化粧しはじめたの。



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