狂愛彼氏


私は、疾風の向かい側に座った。


掌にジワリと汗が滲むような感じがした。


「………俺とお前は初めて会ったのは、カラオケの日じゃない。」

「………え?」


耳を、疑う。
え?あの日が初めてじゃない?
あの日以前に会った記憶は私にはない。



「………俺が、お前と会ったのは、五年前だ」



五、年前……?


ドクッと心臓が軽く跳ねた。


まさか、と思う。
一瞬、脳裏を横切った光景。
でもそんなわけない。


「俺は、仲間とバイクで走っていて、何時も通る公園があった。」


その公園は、俺達が何時も通るからか、他の連中は踏み入れない場所だった。


「でもその日は、バイクが何台か止まっていた。」


公園の奥の方にバイクが数台。
それは、俺達にとっては不審に見えて。


「仲間と一緒に近付いたら………男と女がいた」

「っ……」


ギュッとスカートを握る。
皺になるかもなんて気にしなかった。


疾風の視線が私に向けられる。


< 59 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop