王族の婚姻をなんだと思っていますか!
「……そう、なの?」

どうしたことかオロオロと慌てている王妃殿下に、私はまた小首を傾げてみせる。

「あまりにも急に求婚されましたから、保留にしてしまいましたが、嫌いではありません。人となりがわかってくれば、いえ、正確には、つかみどころは全くありませんが、私を大切にしてくださっているのは知っています」

それに、未遂とはいえ私は一度ウォル殿下を受け入れている。

「ですが、報告では、いつも姫はウォル殿下を迷惑そうにされていると……」

「正直に申し上げますと、私が城に来る度に、騎士団の詰所まで送ってくださるのは嬉しいですが、それはウォル殿下のお仕事ではないですし、毎回のように、単なる侯爵家の娘が、ご飯食べに内宮に入り浸るのもどうかと思いますわ」

滔々と語ると、王妃殿下は呆れたように私を見つめていた。

「一緒にいたいと思うのは、恋心ではなくて?」

一緒にいたい……。

「なるほど……っ!」

ポンと手を打ったら、めちゃくちゃ脱力された。

「一緒にいると楽しいですわ。私はちゃんとお仕事に差し障りないか、気が気ではなかったんですが、私的なわがままでしたら……。いえ、わがままもダメでしょう? きちんとお仕事しなくてはいけません。ウォル殿下は近衛兵団の団長なのですから」

真面目な顔をして言うと、王妃殿下は口もとを押さえながら、鈴が鳴るような澄んだ声で笑いだす。

「いいことを教えてあげましょう、ノーラ」

「なんでしょうか?」

「それをウォル殿下に言えるのは、正妃の立場の者だけです。姫が問題ないならば、さっさとその立場をもぎ取っておしまいなさい」

もぎ取れと言われましてもねぇ……。

「まさか、求婚し直してくださいとは言いづらいです」

「大丈夫ですよ。あの方に“嫌いじゃないです”と教えて差し上げたら、すぐに求婚し直してくださいます」

ウォル殿下に、私はあなたが嫌いじゃないですって言えと?

「それもどうかと思うのですが……」

「姫はすでに準王族の立場なのですから、内宮も出入り自由ですわ。サクッといってらっしゃいませ」

どうしたことかワクワクしながら王妃殿下は立ち上がり、私の手をとると引き上げられる。

「女も度胸ですわ、ノーラ」

母上が言いそうなことを、まさかの王妃殿下に言われて、ついでにお尻を叩かれて、私は離宮を後にした。









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