ドラゴンの血を引く騎士は静かに暮らしたい
「あれ? この子はセイダーよりも柔らかい?」

エラルダを撫でながら、セリが呟くと後方に控えていたルカが説明する。

「セイダーは騎士団所属の竜では最年長なんです。エラルダは逆でこの騎士団の所属の中で一番若い竜なんです。それにこの子は騎士団所属には珍しく女の子なんですよ」

その言葉に姫は目を丸くして、エラルダを見つめた。

「女の子の竜なんですね。若いし、それもあって柔らかいのかしら?」

「そうですね。歳を重ねるごとに鱗は固くなるものだと聞いています。それでもメスのほうが柔らかいんだそうですよ」

「そういう感じなんですね。竜ってすごい長生きなんですよね?」

なんて若者同士で話がはずんでいる、可愛い少女と少年のやり取りは年長者には微笑ましい。
見守る兄のような心境でいると、混乱から復活したアマリアとイソルガもやってきた。

「あんなに生き生きした顔をしたセリを見るのは久しぶりだわ。まさか竜と触れ合いに行くとは思わなかった」

そんな一言に、さらに加わったのは少し心配なのか保護者目線だ。

「で、隣にいる少年はどなたですの? ガルドウィン団長」

ちょっと、目がマジで内心で引きつつ答える。

「彼は俺の伝令役で二年目の騎士でルカという。あの白い竜の相棒だからな。あの竜は好奇心旺盛でやんちゃ娘だから、舵取り役がいないと大変だろう?」

一緒に訓練や討伐に行っているアマリアやイソルガは竜の本質を知っている。
長命で自分が許した相手しか乗せないプライドがあり、パートナーが亡くなるときまで見守り、運が悪ければ生涯で一度しかパートナーを得ない竜もいる。
竜とは気を許す相手を見極め、それ以外にはあまり気を許さない生き物である。

セイダーやエラルダは触れるのを許しているが、この二体が珍しいのである。
エラルダは好奇心から、セイダーは長生き故に心が寛容になってきているからだろうとは思うが。
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