ドラゴンの血を引く騎士は静かに暮らしたい
他の竜はこちらを気にしつつも、こっちには来るなよって気配を漂わせている。
知らんぷりを決め込むのもいる、竜にも個性がありぞれである。

「ルカは、エラルダと組んだばかりなのに伝令役なんですね。すごい」

いろいろ話しているようだ、あの二人はたぶん同世代だろう。
ルカは明るく社交性も高く、騎士団では一番の下っ端だが素直な性格で、仕事にも真面目に取り組むので先輩騎士たちは目をかけ手をかけ育てている。

「それは僕がすごいんじゃなくって、エラルダがすごいんだ。この子はセイダーに次いで速く飛べるから。それを乗りこなせているから伝令役ができてるだけだよ」

ルカは己をよく理解している。
騎士としての体術剣術はまだまだ足りない。それでも己の竜との飛行術は抜群なのだ。
仕事は出来材適所が重要。
ルカは真面目なので、この先まだまだ伸びる。
先が楽しみな騎士なのだ。

「でも、エラルダはそんなルカ君を信頼しているから乗せて飛んでくれるのでしょう? それだけでも立派だと思うわ。竜は人を選ぶって聞くから」

やはり、一国の王女だけあり見識は豊富なようだ。
そして思慮深く、思いやる心のある人物であると癒しの姫たるセリ様をそんな風に見受けた。

「セリ、楽しそうね。いつも兄姉か魔法師団の中でしか関りがないものね……」

セリ姫の力を考えれば致し方のない事だろう。
強い力は得てして外から狙われやすい。
しかし、そろそろ彼女自身でその脅威ものけられるのではないだろうか?
そんな風に感じつつも他国のことには口出しできないで、この場は今あるこの時間を見舞るだけだ。

いずれ、時がたてばなにかが変わるときもあるだろう。
だが、希代の魔法師である第二王女が国外に行くことはまずないのではないかと思う。

この交流は、彼女の数少ない貴重な外界との接触では?
すこしでも、この殺伐とした場での出来事の中で竜との関りが良いものになればと思ったのだった。
< 27 / 30 >

この作品をシェア

pagetop