愛を乞う
翔悟の思い

翔悟は悩んでいた。
なにせ、今まで扱ってきた女とは違う。今まではどちらかと言うと女の方から言い寄られることが多く、自分のものにしたいと思う女は多くはなかった。
だが、少し気が強く、綺麗で可愛らしいのに自分に全く自信がなく、無垢な身体。
自分は惚れてると言ったが、雪からはそれらしい言葉はもらえていない。
反応を見ると自分に気があるとしか思えないが。
少し駆け引きしてみるか。
それで、自分に愛の言葉を言わせたい!
ニヤッと笑った。

翔悟は自分が、経営しているクラブに行き、適当な女を連れ帰る。
「お帰りなさいませ…。お客様ですか?」
と雪が言う。可愛い目が揺れる。
「ああ、そうだ。部屋に行く。」
と告げるとさらに目が揺れ、寂しそうに俯いた。
「あら、可愛らしいお手伝いさんね。翔悟さん、早く行きましょう。」と女は抱きつく。
「そうだな。」と答え、部屋に行く。
雪はその場で立ち尽くし、手をギュッ握りしめる。

ふふっと翔悟は笑う。
上手くいった。きっと雪は嫉妬しただろう。これで、自分に縋り付いてくるに違いないと思った。
女はそのまま、裏から帰した。
「馬鹿にしてるの?」
と怒っていたが、気にしない。

翌朝、朝ごはんを作る雪は元気がなかった。
少し胸がちくっとしたが、仕方がない。
あとはお前が縋り付いてくるだけだ。

その後、雪はいなくなった。
買い物に行くと言って、出かけたが護衛を巻いていなくなったのだと聞かされた。

奈緒の血の気が引いた顔があった。
「何があったんですか?雪は無事なんでしょうか?」
「わからない。自分で護衛を巻いていなくなったのだから、事故とかに巻き込まれた訳ではないようだ。」
と俺は言う。
「では、何故…。」
隣の智仁が奈緒を心配して、俺に答えを促す。
「実は…。」
と昨夜の嫉妬させる計画を話した。
「なんてことを!一番やってはいけないことなのに!」
と奈緒が言う。
「どうしてだ?自分の気持ちに気づいてくれるかと思ったが?」
奈緒は息をすぅっと吸って
「雪は自分よりも他人を大事にします。自分が好きな人でも、誰かがその人を好きだと知るとその人のために動きます。そして、自分は黙って身を引くんです。だから、雪の恋は実ったことがないんです。
しかも、雪は自分が唯一の存在ではないと思うとその人から離れるんです。自分の居場所を探しているから…。だから、私も智仁さんとのことを言い出せなかった。私から雪が離れると思ったから。でも、雪は喜んで応援してくれた。
そんな雪に、なんてことを!」

なんてことだ!
俺から雪は逃げたということか?
俺に他に好きなやつがいると思って?
さぁっと血の気が引く。
雪を探さなければ!
奈緒に聞いて、雪達のアパートに行った。
鍵を開けて入ったが、いない。
しばらく待つが帰って来ない。
俺は雪を探し回った。
はたと気づいて、雪の会社に連絡する。
もう、そこしか考えられなかった。
「藤城様、今、丁度ご連絡差し上げようとしてた所でした。」
「どうした?何かあったのか?」
「いえ、うちからお宅に派遣させていただいている鈴木雪ですが、先程突然来社しまして、お宅との契約を破棄してほしいと言うもんですから。こちらといたしましても、誠に恐縮ではありますが、鈴木との契約は解除させていただきます。 違う家政婦をお求めでしたら、新たにご契約をお願いいたします。」
と。
「雪…。本当に俺から離れるつもりか?」
と呟く。
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