また内緒の話





そして来那は動画も撮り始めた



「ねえりっちゃん
なんで海に連れてきてくれたの?」



「あーそうそう、」





俺は木の棒を持って波が来る砂に俺の名前を書く




『律』




名前を書くと



その名前は波によって消される




「消えた」



来那が小さく言う




また俺は



『律』




また消される





『律』




消される





『律』





消される




「ねえ、何がしたいの?」




来那も見兼ねて俺の謎な行為に不信感を抱いている




「海って来那みたいだよね」



「なんで?」



「思い出も全部波で消しちゃう
俺の名前も消しちゃうんだけど
俺は何回も来那の思い出に名前を書き続けるよ
何回も消されても何回でも書く
さっきの銀髪は」





『銀髪』





消される





「消えていい人間だ
俺の名前は消えてもまた俺が書くから消えない」




「よくわかんないけどありがと」



「わかんねーのかい!」





まあいいんだ、要は来那が記憶を消しても俺が居続ければいいって話だ





そんなこんなで




来那の不安を消せたかはわからないけど




こういう形で来那との思い出を共有していたい








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