また内緒の話
しばらく沈黙が続く
「原因不明の記憶障害だからな
治す手段がないってことは俺にもわかる」
お兄ちゃんは沈黙を破った
「……うん」
私は一言返事をするだけ
「……わかった、でも昔の記憶は?」
昔の記憶……
お母さんに虐待を受けてたこと、
ちゃんとそれは覚えてる
「覚えてるよ」
「なんだ、じゃあ俺を忘れることはないんだな?
それなら生活はあんま変わんないだろ
それがわかればそれでいい」
「お兄ちゃんはそれでいいかもしれないけど
私、りつの事も忘れちゃうんだよ?」
「ばかやろー、男はな
一度決めた覚悟は曲げねーんだ
今日律くんと色々話したんだろ?
その言葉を信じるのもそうだし
律くんを信じれば、来那を絶対幸せにしてくれるはずだよ」
「………お兄ちゃん…」
すごく嬉しい言葉だった
お兄ちゃんがそう言ってくれただけで私は少し安心できた
「よし、飯食って今日は早く寝ろ
んで、明日俺が休みだから1日面倒見てやるよ」
お兄ちゃんは私の頭をくしゃくしゃと撫でる
「ありがと」
そう言って私はお兄ちゃんのご飯を食べてすぐに眠りについた