また内緒の話
来那side
私はりつの悲しそうな表情を閉ざすようにドアを閉めた
玄関で靴を脱いで自分の部屋に入る
大きく壁に貼ってある
『私の大好きな人はよしみりつ』
というメモをしばらく見つめていた
絶対に忘れるわけないと思ってた
でもこんなに好きなのにあと3日で記憶が無くなっちゃう
なんでこんなことになっちゃったんだろう
昨日の記憶がほとんどない
でも微かだけど私の記憶にりつが残ってる
それだけが私の救いだった
日記を書いてたはずだけど
どこにしまってたか覚えてない
だからもういよいよ私は記憶を記録出来なくなってしまった
もう、どうにもならないよね
ただ記憶が無くなるのを待つだけ
しばらくすると
乱暴にドアが開く音がする
ものすごくうるさい足音を立てて私の部屋をノックする
「来那?帰ったぞ」
いつもより少し早めにお兄ちゃんが帰ってきた
「……うん」
「話ってなんだ?」
「………」
私は今日あったことを全部話した
昨日の記憶がないのと
思い出そうとすると目眩がする
そして
「3日で記憶が無くなるみたい」
「………はあ?」
お兄ちゃんは眉間にしわを寄せていた
「じゃあもう何も記憶できないってことか?」
「多分そうだと思う」
「………」
お兄ちゃんは黙ってしまう