溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
御曹司と偽りの婚約を
おそらく、その日は運命の日、だった。


今日は大きなパーティが入っている。そのせいか、フロントも混雑していた。

私、西條澪(さいじょうみお)は、フランス語で“虹”を示すホテルアルカンシエルに勤めて早五年。高校を卒業し、ハウスキーパーとしてコツコツと働いてきた。

黒いワンピースに小さな白いエプロンはまるでメイドの様で最初は照れたけど、今となっては結構気に入っている。

規則は厳しく、ネイルや香水は禁止。髪は黒。そして肩より長いときは束ねなければならない。

ヘアアクセサリーも黒か茶色の控えめな物だけが認められている。
私は胸の位置ほどまである髪をポニーテールにして、黒いリボンで結ぶのがいつものスタイルだ。

アルカンシエルは比較的歴史の浅いホテルだが、地上約二十五階建てで約千室の客室を誇り、設備も新しいことから、最近注目されている。
プールもあるしフィットネスも充実している。


「澪、終わった?」


ひと段落ついて休憩室に行くと、ショートカットが似合い、クリクリとした目がかわいい同期入社の百花(ももか)がコーヒーを飲んでいた。
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