溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
私の今日の担当は、十二階だった。


「うん。今日もギリギリだったわ」


客室の清掃は、チェックアウトの十時からチェックインの十五時までが勝負だ。

基本、ふたりでひとチームになって動き、ひと部屋二十分以上かかると間に合わない。
その間にバスルームをきれいにし、掃除機をかけ、ベッドメイキングなどを済ませる。

ベッドメイキングは想像以上の重労働で、始めたころは全身筋肉痛になるくらいだった。


「でも、あとはスイートがまだ。連泊されるお客さまがあとにしてくれって。百花は?」


百花は私と同じ正社員。
そして偶然にも同級生だ。

入れ替わりの激しいハウスキーパーの中では一番の仲良し。


「私もギリギリよ。新人くん、呑み込みが悪くて」


私たち社員は、バイトの人たちの教育係りを兼ねている。
だから新人と組むことが多く、指導しながらの掃除は結構しんどい。

しかも頑張っても、重労働だからかすぐに辞めてしまう人も多い。
< 2 / 363 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop