溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
それは、パーティのときに会った、大成さんのお父さまの秘書だった。


「あんた、誰?」

「私は通りすがりの者ですが、ここの社長とは親しくしていましてね」


その瞬間、学生の顔色が変わる。


「すみません」

「今日の時給も支払わないように伝えておきます。それが社会というもの」

「あっ、いや、これからちゃんと……」


しどろもどろになる学生に、中野さんは鋭い目を向ける。


「信用できません。責任者には私が説明しておきます。お帰りください」

「チッ」


どうしても許してもらえないとわかった学生は、舌打ちをして去っていく。


「中野さん、ありがとうございました」

「覚えていてくださって、光栄です」


背筋をピンと伸ばしたまま腰を折る中野さんは、立ち居振る舞いも上品で、恐縮してしまう。
だけど、今は!


「すみません、時間がなくて!」


もっと話したいところだけど、今は急がなきゃ。
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