溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
「もし、澪の過去の傷が癒えていないのなら、俺が治してやりたい」


それは家族をなくしたことを言っているの? だから、それきり弾けなくなったピアノまで買ってくれたの?


「私……」


なんと言ったらいいんだろう。
出会ったばかりとはいえ、私だって彼のことが気になっている。
もしここでさよならしても、ずっと気になり続けるだろう。


「これが恋ってやつなのかなと思ったんだけど、こんなに早く好きになるのって、おかしいのか……」


あんな大きな会社を背負うかもしれない彼が、容姿も地位も、なにもかもがそろっている彼が……恋の定義で悩んでいるのか意外すぎる。


「わ、かりません」


私だって、恋い焦がれた経験なんてないもの。よくわからない。
だけど、彼のことは嫌いじゃない。


「澪。俺と恋に落ちてよ」


そのひと言に、いっそう鼓動がうるさくなる。
なんだかよくわからないけど、ぞわぞわとした感覚が体を駆け巡る。
< 138 / 363 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop