溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
スーツ姿の客は、腕時計を見て足を速める。
忙しいビジネスマン、という感じだ。

大成さんもこんなふうに働くのかな。
その姿に彼の未来の姿を重ねた。


「エレベーターのドアが閉まるまで、頭を下げ続けてください」


お客さまが目の前を通りすぎると、今度はそのうしろ姿に頭を下げる。
小声で伝えると大成さんも同じようにしていたけど、お客さまがエレベーターに乗ってしまうと口を開いた。


「俺たちのことなんて気づいてないぞ」


彼の言う通り、うしろを振り向くことのないお客さまは、私たちがお見送りしていることなど少しも気がついてはいない。


「わかってます。でも、アルカンシエルの宿泊料って結構高いんですよ」


アルカンシエルの歴史は老舗ホテルに比べるとまだ浅いが、格式の高いホテルだ。
宿泊料は老舗と言われる一流ホテルのそれに近い設定になっている。


「それが?」


大成さんは不思議そうに首をひねる。
< 149 / 363 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop