溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
「楠(くすのき)じゃないか」

「お前、ここでなにしてるんだ?」


大成さんのつま先から頭まで視線を這わせた楠さまは、目を丸くしている。


「まぁ、事情があってな」

「さてはやらかしたな」

「ビンゴ」


クスクス笑う楠さまは、「制服、似合ってるぞ」と大成さんをからかっている。
楠さまに手を引かれている華奢で色白な女性は、奥さまだろうか。


「今日は、宿泊してくださっているんでしょうか?」


大成さんは従業員の顔に戻って尋ねている。


「あぁ。結婚記念日なんだ。たまには、な」


少し照れくさそうにしている楠さまだけど、その顔はとても優しい。


「時間ができたら飲みに行くって言ってただろ……連絡して来いよ」

「悪い。それどころじゃなくて」


大成さんは少しバツの悪そうな顔をする。
どうやら楠さまとは仲がよさそうだ。

大成さんの味方が中野さんだけじゃなかったんだと知り、ホッとする。


「で、なにをやらかしたんだ?」

「婚約破棄しただけさ」
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