溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
顔を上げた楠さまは口に手をかざして私に耳打ちするけど、大成さんにまる聞こえだった。


「楠! お前もじゃないか。どれだけ奥さんのことを聞かされたことか。普段はあんまりしゃべらないくせして、奥さんのことだけは饒舌だったもんな」


大成さんが反撃に出ると、奥さまが恥ずかしそうに目を伏せる。


「うるさいな。お前も早く結婚しろよ。いいぞ、結婚」

「言われなくても」

「それじゃあ、また連絡するよ」


さりげなく奥さまを促して立ち去る楠さまは、素敵な紳士だった。


「素敵な方ですね……」


思わず漏らした言葉に大成さんが反応する。


「いいから、お前は俺だけ見てろ」


朝言われたことを繰り返されて、胸がドクンと打つ。
そして楠さまの『よほど惚れてるんでしょうね』という言葉がリフレインして、勝手に頬を赤らめた。
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