溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
ピアノがなくなってしまったという絶望感から、なにもかも放り出しただけ。


「私も、もっと頑張れるはず。なにかのせいにして、逃げちゃいけなかった」


両親が離婚して母を亡くしたあとも、もっと必死にバイトをして、勉強もして……そうすれば、違った未来があったかもしれない。
どこかで『どうして私だけ』と不貞腐れて、音大に行けなかったことを父や母のせいにしていた。

アルカンシエルの未来のために奔走する大成さんも、彼をトップに立たせたくて倒れるまで働く中野さんもすごすぎて、今までの私の努力なんて足元にも及ばない。
私だって、まだまだできる。


「澪。お前は十分に頑張ってきたよ」


私の過去を知っている大成が、そう言ってくれるのはうれしい。
けれど、私は首を振る。


「私、なにもかも中途半端なんです。エグゼクティブハウスキーパーになれるくらい、頑張るつもりです」


エグゼクティブハウスキーパーというのは、客室部門の最高責任者のこと。
いつも私たちに指示を出すチーフより上の立場の人だ。
< 244 / 363 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop