溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
乱れているシーツを外していると、彼女はまた口を開いた。


「彼がね、ちょっと激しくって」


その『彼』は大成さんだと言いたいのだろうか。
でも、大成さんはそんなことをする人ではない。

そんな挑発には乗らず、黙々とベッドメイキングを続けた。


「彼ね、悪い女に引っかかっちゃったみたいで、私に相談してくるの。どうやったらあと腐れなく別れられるかって」


そう言われ、私は一瞬彼女と視線を合わせてしまった。
すると、千代子さんはニヤッと笑う。

『あなたのことよ』という心の声が聞こえてきたけれど、私は何事もなかったかのように再び手を動かし始めた。

千代子さんの言うことなんて信じない。
私は大成さんの言葉しか聞かない。


「ベッドは終わりました。次は浴室を掃除します」


私は千代子さんに頭を下げ、浴室に向かった。


「随分余裕ね」

「なにがでしょう?」


浴室の入り口までやってきて話しかけてくる彼女に、掃除の手を止め返事をする。
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