溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
婚約者のフリなんて。と最初は目を丸くしたけれど、彼に愛を囁かれ、私もあっという間に恋に落ちてしまった。

身分違いなことは、重々承知している。
でも、私は彼が好き。
自分の背負った運命に苦しみながらも、それを受け入れ、必死に前を向いている彼が。


演奏が終わりゆっくりと鍵盤から指を離したものの、会場は静まり返っている。

あぁ、やっぱりド素人の演奏では拍手なんてもらえないよね……と思った瞬間。

どこからか拍手の音が聞こえたかと思うと、あっという間にそれが広がり、食事を楽しんでいた人たちが立ち上がってくれる。
スタンディングオベーションってやつだ。

まさか、こんなことになるなんて。

私は慌てて立ち上がり、深く頭を下げた。

すると近くに座っていた上品なマダムが、私のそばまでやってきて口を開く。


「とってもよかったわ。タッチは粗削りだけど、あなたの魂が乗り移っているかのようで、なんかこう……涙が出てきそうになったの」

「ありがとうございます」
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