溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
テーブルにコーヒーカップを戻したお父さまは、さらに続ける。


「恥ずかしいんだが、いつの頃からか、大成のことがわからなくなった。会社を守らなければと必死で……私の経験上足りなかった部分を大成に教え込んでおかなければと、経営学や経済学、それに英会話まで……押し付けてきました」


そのせいで大成さんが苦しんだのは知っている。
けれど、お父さまも必死だったんだ。


「その結果、大成の青春を奪ったのかもしれません。そのうち大成は、私と言葉を交わすことすら拒否するようになりました」


私は少しうつむいたまま話に耳を傾けていた。


「中野に大成を任せたら生気を取り戻していって……。中野になにをしたんだと聞いたら、普通の楽しみを教えただけですと笑っていた」


社長が中野さんに視線を送ると、中野さんは「恐縮です」と小さく頭を下げている。
やはり中野さんは大成さんにとって恩人だ。
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