日向 HIMUKA
この一見不気味な風貌の中に隠された、
ごくたまにのぞかせる優しげなまなざしは、
知る人ぞ知るしろものなのだ。

風邪でもひいたのか、
日向は、顔のやく半分をマスクで覆っていた。

「いつからそこにいたの?」

ぼくは、
一人言を聞かれた気恥ずかしさをごまかそうと、
早口で言った。

「数日前じゃが」

「全然知らなかった」

「いつもそこにいるからな。そこからではあまり目につかんじゃろ」

日向は、
さっきまで潜んでいたゴミ置き場の裏を指さして言った。

「あそこはいい風よけになる」

霊媒師というものは気まぐれらしく、
一箇所につねにいるというわけではない。

特に一人者の日向は、
風の向くまま、気の向くままという風に、
あちらこちらに出没しては、世の迷える人々を救っているらしかった。

< 18 / 85 >

この作品をシェア

pagetop