約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
ただ家の中から、時折、覗いているような視線を感じる。
そんな視線に気づいていないはずはないのに、
斎藤さんはただまっすぐに、会津の中の目的地へと向かっているようだった。
「ねぇ、敬里は気づいてるんでしょ。
今、感じてる視線」
「あぁ、知ってる。
けど仕方ないだろ。お前、歴史の授業忘れたか?
会津藩と会津の町人たちは、一体じゃないだろ。
会津藩のやり方で税の負担が重くなった町人たちは、
藩の役人を憎み、新政府軍を歓迎した町もあったって習わなかったか?」
「えっ?そんなこと習った?」
「だから俺たちが会津藩を頼ってここに来たとも今は悟られてはならないし、
この町人たちが味方とも限らないってことだよ。
だからとっとと、俺たちは早く合流しなきゃいけないよな」
敬里はそう言って、体力がなくなって歩くスピードが落ちてきた隊士に肩を貸しながら、
一歩一歩、前に踏み出していく。
若松城下へと辿り着いた私たちは会津藩より歓迎を受け天寧寺にて宿をとることが許された。
天寧寺にて負傷者の手当や休息に勤しむ傍ら斎藤さんは会津藩の重役さんたちの元に赴いて、
作戦会議みたいなものに参加したり、会津藩より新しく新選組の部隊へと配属された新しい隊士たちに、
訓練をつけたり。
そんな時間を過ごしながら、後から来るであろう後続部隊の到着を待ち続けていた。
先行して会津入りを果たした私たちの元には、
今もなお、近藤さんが大久保大和として新政府軍に捕まったのは勿論のこと、
新選組の近藤勇として斬首されようとしていたことなど、知る由もなかった。