約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)

「あっ、花桜、来てくれたんだ。
 敬丞も」


山崎さんは、どんなふうに動くのかを気にかけてたけど、
私以外には記憶が戻ったことは内緒にする方向なのか、
さっきまでの敬丞としての山崎さん口調で、会話を続ける。


「あっ、おはよう花桜」

「おはよう、瑠花」

「もう体は平気なの?
 帰ってきて三日間ほど、眠りっぱなしだったでしょ。
 花桜のお祖父さまが心配して、パパに電話してきたんだよ」

「あぁ、そう言うことかぁー。
 そんなこと知らなかったから普通に起きたら、
 凄くびっくりされちゃった。

 もう全快、全快。
 ちゃんと来週から学校にも復帰するわよ」

「なら、放課後はみっちりと私が勉強のサポートしてあげるよ。
 皆、もうすぐ進路をはっきりと決める時期になってるんだから」



そんな何気ない会話が懐かしくも楽しく感じる今。


病棟の事務員さんが、敬里の請求書を持ってくる。


その紙面に書かれている金額は、
お祖父ちゃんから預かって来た金額には届かない。



「あれっ?
 請求金額間違ってませんか?

 祖父からはもう少し預かってきてるのですが……」

「こちらの特別室の使用料は、
 この度の請求には入っておりません。

 其の為、こちらの請求金額で間違いございませんので
 確かに頂戴いたしました。

 後ほど、岩倉先生が顔を出される予定です。
 今暫く、こちらでお待ちください」


事務員さんはそう言うと、 
一礼して病室を出ていった。


「瑠花……」

「大丈夫。
 パパに甘えておいて」


私の気持ちと裏腹に、瑠花はにっこりと笑ったまま。


「遅くなってすまない」


ふいに病室に響く声は、瑠花のお父さん。


「お世話になりました」

「パパ、有難うvv
 今日、山波さんの家で総司の快気祝と、花桜のお帰りなさいパーティーするから」

「あぁ、仕事が終わったらパパも寄せて頂くよ。
 楽しんできなさい。

 花桜さん、近いうちに健康診断に。
 いろいろと長い時間あったみたいだからね。

 総司君、退院おめでとう。
 何かあったらいつでも頼っておいで」



瑠花のお父さんが、敬里ではなく『総司』として沖田さんを認識している現実。



「有難うございました」


総司は深々と、瑠花のお父さんに一礼した。



病棟の看護師さんたちにも見送られて、
私たちは賑やかに病院を後にした。
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