私の上司はご近所さん

「部長には彼女がいるでしょ?」

彼女がいる人とキスしてしまったことが後ろめたくて、自分を戒めるように唇をキュッと引き締めると顔を上げた。けれど部長は、訳がわからないといったように首を傾げる。

「ん? 彼女ってなんのことだ?」

「部長の隣にいた女性って彼女ですよね?」

彼女同伴でウチに来たことを問いただすと、部長の瞳が丸くなった。

「ああ、あれは俺の妹だ」

「えっ? 妹?」

「そうだ。かなり前に、妹がいるって話をしたのを覚えてないか?」

「あっ!」

私が思い出したのは、夏ショコラのイベント準備で残業が続いたときのこと。家まで送ってもらう帰り道で、部長に妹さんがいることを聞いた記憶がよみがえる。

「夏休みを利用して上京したんだ」

部長の隣にいたのは妹さんだったと知り、ホッと胸をなで下ろす。けれど納得いかないことがまだある。

「でも主任が部長には彼女がいるって言ってましたよね?」

春に開催された歓送迎会で、部長には彼女いると主任が言っていた。部長の同期である主任の発言は信憑性があるし、真面目な主任が嘘をついたとは思えない。

真実を知りたい一心で部長に詰め寄ると、彼がバツ悪そうに頭を掻いた。

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