私の上司はご近所さん
「あれは昔の話だ。中原の言う通り長くつき合っていたのは事実だが……フラれたんだ」
「えっ? 嘘っ!」
優しくて、思いやりにあふれていて、頼りがいがあって、しかもかっこいい部長がフラれるなんて信じられない。つい大きな声をあげてしまう。
「嘘じゃない。エンゲージリングを用意してプロポーズしようとしたその日にフラれたんだ。結構ショックでしばらく立ち直れなかった」
「……」
私と十三も年が離れている部長が、今まで誰ともつき合ったことがないとは思わない。けれど過去に結婚を決意した女性がいたという事実はとても衝撃的で、胸が苦しくなった。
「広報部のメンバーが大勢いる歓送迎会で、フラれたと公言するのはカッコ悪いだろ? だからあのときは黙っていたんだ」
「そうだったんですか」
「まあな」
主任や広報部のメンバーにも話せなかった元カノの話を包み隠さず打ち明けてくれたのは、私を信頼してくれている証拠。複雑な気持ちを抱えつつも、部長の過去は気にするな、と自分に言い聞かせた。その矢先……。
「昔の話はもういいだろ? 今は園田さんのことが好きなんだから」
「……っ!」
部長に顔を覗き込まれる。
「そろそろ園田さんの気持ちを聞かせてくれないか?」