私の上司はご近所さん
「こうなったら一刻も早く、ご近所さんを卒業するしかないな」
私を組み敷いた瞬間、突拍子もないことを言い出した彼に衝撃を受ける。
札幌支社から本店広報部に異動してきた千秋さんの人柄を知ることができたのは、私と彼がご近所さんだから。職場で挨拶をして、仕事の会話を交わすだけの関係だったら、私は彼に惹かれていなかったはずだ。
「えっ? 引っ越しちゃうんですか?」
いくら恋人になったといっても、離れ離れになってしまうのは不安だし寂しい。体を密着させたままの千秋さんを見つめていると、彼がクスクスと笑い出した。私には、千秋さんが何故笑うのかわからない。
「本当にかわいいな」
「……?」
彼は不思議がる私にかまわず、唇に短いくちづけを落とした。
「引っ越すときは百花も一緒だ」
「えっ?」
「将来、俺とひとつ屋根の下で一緒に暮らしてほしい」
これってまさか、プロポーズ?
私と千秋さんはつき合い始めたばかり。まだお互いについて知らないことも多いけれど、彼の言う通り、一緒に暮らせる日が訪れたらうれしい。
彼のご近所さん卒業宣言を前向きに捉えた私が「はい」と返事をすると、再び甘いくちづけを交わした。


