私の上司はご近所さん
「部長。彼は私の幼なじみの矢野翔太くんです」
翔ちゃんは「どうも」と言うと、部長に頭を軽く下げる。
「藤岡と申します」
部長は翔ちゃんとは違い、深々とお辞儀をした。
無愛想だった翔ちゃんにきちんと挨拶を返すなんて、部長は律儀だな……。
部長の大人な対応に感心しつつ、翔ちゃんと矢野ベーカリーの紹介をする。
「部長、翔ちゃんが作るメロンパンはすっごくおいしいんですよ。中はふわっふわっで外はサックサックです」
焼き上がったメロンパンは飛ぶように売れていく。それくらいメロンパンは人気がある。もちろん私も翔ちゃんが作ったメロンパンが大好き。
「おい、百花。オマエ、説明ヘタすぎだから」
翔ちゃんは私の頭に手をのせると、髪の毛をクシャクシャッとかき乱した。
翔ちゃんはすぐに私をからかう。エイプリルフールに宝くじで十億円があたったと言ったり、今だってボサボサになった私の髪型を見て大笑いしている。
「え~! 部長、そんなことないですよね?」
からかわれたことが悔しくて、翔ちゃんの手を払いのけると部長に尋ねる。けれど部長は私たちの様子を見てクスクスと笑うだけ。
部長が否定も肯定もしないってことは、ほかのお店の説明もヘタだったってこと?
一抹の不安を覚えた。